ヘリオスシティーー 4089.3.12 AM5:38ーー
その少年は”何か”を求め、歩いていたーー。
だが少年自身もまた、その”何か”を未だ解っていない。
十二、三の歳の見た目には不釣り合いの、えらく遠い目つきをした少年。
名を、アイザック=フラディープ。
長い紫の頭髪を揺らし、リュックサックのベルトを直しながら、一心不乱に視えざるものをたどっていく。
すると小指の先が、その”何か”に触れたような気がした。
錆びた金属、ホコリ、人間臭。
沌々とした大気のなかに感じた、一抹の七色ー恍惚ー-。
だが触れたと思えば、それは離れていったーー。
アイザックはまるで落とし物を探すかのように膝を付き、パネルの敷き詰められた地面を触ってゆく。
だが”何か”の気配を捉えることはできなかった。
標を失ったアイザックは、こと切れたロボットのように動きを停める。
やがてゆっくりと立ち上がり頭を上げると、空を仰いだ。
光化学スモッグに覆われた早朝の空を見る。
だが星一つ見当たらないことに気づいたアイザックは、すぐに何も言わずに再び歩きだした。
その瞬間、曇った天のキャンバスに、流れ星が微かに光ったような気がしたが、アイザックがそれを捉えることはついぞ無かったのだーー。
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2021年5月22日 /